
代表理事
伊藤 誠
この度、一般社団法人 Vision & Mobilityを設立させていただくことになりました。この法人では、視野に障害のある方の自動車の運転を中心に、運転能力の評価、助言、技術的支援などについて研究し、実践していきたいと考えています。
一番大事なことは、視野に障害があっても不自由なく日々の生活を送ることができる社会的環境を実現することであって、自動車を利用した移動はその一つの手段にすぎません。長い目で見れば様々な対応策を考えることはもちろん可能です。しかし、現実的に今すぐにできること・すべきこととして、視野に障害のある方による自動車運転の安全を確保することを、この法人では目指したいと考えています。
視野に障害があるからといって、直ちに自動車運転を取りやめないといけないわけではなさそうです。実際、これまでの経験では、少々視野が欠けていても、安全に運転できている人はいます。もちろん、障害の程度が重くなった場合には、どこかの段階で自動車の運転をあきらめていただかないといけない場合はあります。問題は、視野の障害に関して、自動車の運転能力をどう評価し、どう助言をし、どう支えていけるか、あるいは、どこまで悪くなったら運転を取りやめる判断をすべきか、ということについての方法論が完全には確立できていないところにあります。
この法人の設立に先立ち、一部有志の先生方の努力によって、眼科に「運転外来」を開設し、成果を上げ始めています。自動車の運転能力について視野という観点から具体的に検討できるのは、やはり正確な視野検査が可能な眼科の外来です。本法人では、運転外来で蓄積した知見をもとに、眼科にかかわる皆様と情報・意見交換を深めるとともに、可能な施設には運転外来の導入をお手伝いしてまいります。
自動車運転能力の評価・向上の手法をより良いものにしていくためには、眼科の皆様のみならず、道路交通、自動車技術を専門とする皆様のご支援も不可欠です。本法人の趣旨にご賛同いただける、幅広い分野の皆様のご協力をお願いできれば幸いです。